本社で一括届出が可能だが、それぞれ提出となるケースも
就業規則は、すべての事業所で作成しておくことをおすすめしていますが、常時10人以上を雇用している場合には所轄の労働基準監督署長に届出が義務付けられています(労働基準法 第89条)。
新宿区なら新宿区の、渋谷区なら渋谷区の労働基準監督署に就業規則届を提出する必要があるということです。
正社員に限らず、パート・アルバイトも含めて10人以上雇用している場合が当てはまります。
ただし、全国展開している企業の場合など複数事業所がある場合、本社で就業規則を作成して、一括届出が可能です。
今回ご紹介するのは、本社で一括届出をしようとして難しいことがわかり、所轄ごとに提出することになったケースについてです。
就業規則には、「必ず記載しなければならない事項」として次の絶対的記載事項が定められています。
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
※このほかに「定めをする場合に記載しなければならない事項」があります。
所在地ごとに提出することになったのは、事業所によって就業時間がシフトで組まれているためバラバラだった事業所のケースです。
本社で一括届出をしようとしたところ、就業時間の記載に関して監督署によって判断が微妙に異なることがわかりました。
・就業時間はシフトにより定めるという記載では認められず仮の時間であっても00:00-00:00と記載を必要とする
・実情に即して「1日00時間、週40時間以内とする又はシフトにより定める」という記載のみでOKとする
という違いです。
本社のある労働基準監督署の判断は、仮の就業時間を記載するということだった(根拠も提示いただきました)ので、店舗によって営業時間も異なる企業の場合、一括届は難しいとなりました。
なお根拠となる通達は(昭和63.3.14基発第150号、平成11.3.31基発第168号)となります。
「同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び就業の時刻が異なる場合は、就業規則に勤務態様、職種等の別ごとに始業及び就業の時刻を規定しなければならない。」
ただし、この通達は同一事業場においての指標であり別事業所については触れていないため当方としては少々疑問が残っております。
なお、当事務所は都内の企業様を扱うケースが多く、シフトで定めているのであれば実情に即した届け出でよいとされています(今回のことでも何度か確認もとりました)。
今回のケースは本社が東京であれば、一括届が可能だと思われますが、この事業所の場合は所轄地ごとに提出するしかないということになったわけです。
就業時間の記載についてのみ、それぞれの所轄の判断に即して記載を変えて提出しました。
就業規則は現場が混乱しないように作成する必要がありますね。
東京中央労働管理事務所では、就業規則の作成や一括届出などのご相談も承っています。
不明点があれば徹底して確認もとっているので安心してご相談ください。
参考:就業規則の作成・変更・届出の義務
https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article89_90_92.html