賃金カットが可能な範囲と注意点
「退職代行サービス」を利用して、ある日突然、出社しなくなり、そのまま退職となってしまった場合など、従業員の退職にあたり、賃金カットを考慮する際には、法的な基準に沿って、慎重に対応する必要があります。
賃金カットが許される範囲
▶️未就労分の賃金:労働者が労働を提供していない場合、つまり未就労分については、賃金を支払う義務は生じません。たとえば、退職日が月の途中であれば、その月の残りの日に対する賃金をカットすることができます。
▶️日割り計算:退職が月の途中である場合、退職日までの日数に基づく日割り計算で賃金を支払うことが一般的です。
▶️業績連動賞与等:精勤手当や、業績連動賞与やインセンティブ等は、その性質上、労働者の業務遂行状況や企業の業績によって変動するため、退職時の業務遂行状況や企業の規定に基づき調整が可能です。
注意点
▶️明確な規定と事前の通告:賃金の計算方法や賃金カットに関する規定は、雇用契約書や就業規則で明確に定める必要があります。また、これらの規定に基づく賃金カットを行う場合は、事前に従業員に通告することが重要です。
▶️最低賃金の確保:賃金カットを行う場合でも、地域ごとに定められている最低賃金額(東京都の場合は時給1113円)を下回ることは許されません。最低賃金法に違反する賃金の支払いは違法となり、重大な法的責任を負うことになります。
給与が基本給+各種手当で構成されているケースも多いので、手当の要件を満たさないからと単純に手当を削った結果、最低賃金額を下回るということが起こりえます。ご注意を!
▶️不当な賃金カットの禁止:退職の意向を示した従業員への不利益な取扱いとして、不当に賃金をカットすることは禁止されています。退職に至る経緯や理由に関わらず、公平な基準に基づいた賃金の支払いが求められます。
懲戒免職の場合は最低賃金には縛られないが・・・
減給に関する懲戒罰則は、労働者が職務上の義務違反や不適切な行為をした場合に、企業が科すことができる懲戒処分の一形態です。この種の罰則を適用するには、事前に就業規則でその基準や手続きを明確に定めておく必要があります。
労働基準法91条では、懲戒処分としての減給の上限が定められています。
「減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」とされていて、懲戒処分の減給は大きな額にはなりません。
賃金の支払いは厳正に行う必要がありますが、「退職代行サービス」を利用する労働者が、賃金に不服を申し出るケースもまず聞いたことがありません。