労災の休業補償と傷病手当

いずれも3日の条件があるなど、よく似ているようで・・・

労災保険とは

労災保険は、仕事中の事故や業務に起因する病気によって、労働者が負傷、疾病、障害を負った場合や、死亡した場合に、給付を行う公的な保険制度です。給付には、治療費の補償、休業補償、障害補償などがあります。
業務上の事故や病気なのか、通勤災害なのかによっても異なります。

労災保険の待機期間
労災保険における待機期間は、原則としてありません。つまり、労働者が労働災害を受けた直後から、治療費の補償や休業補償の対象となり得ます。ただし、休業補償については、3日間の休業がなければ給付されないルールがあります。これは、3日間未満の休業では給付が開始されないことを意味しますが、3日を超える休業があった場合は、4日目(怪我の場合の治療費は当日)から給付が行われます。
3日は続けて3日とは限らず、1日休業して出社、1週間後にまた1日休業などで通算3日を超えると対象で、平均賃金の約80%が支給されます。

傷病手当金とは

一方で、傷病手当金は、健康保険に加入している人が、病気やケガで仕事を休む必要が生じた際に、収入の一部を補償する制度です。この給付は、労働によらない私的な病気やケガに対して、給与の約2/3が支給されます。

傷病手当金の待機期間
傷病手当金を受け取るためには、病気やケガのために仕事を休んだ日から数えて3日間の待機期間が必要です。これは、初日から3日間は給付がされないことを意味し、4日目から給付が開始されます。待機期間を含めて最長1年6ヶ月まで支給されます。

難しいメンタル不調による労災認定

メンタル不調(精神障害)による休業が労災(=業務に起因する)に当たるのかどうかは、労働時間、労働の強度、休憩の有無、休日出勤の有無、勤務形態、業務の精神的・肉体的負担の大きさ、個人の健康状態やストレス耐性など、総合的に評価されます。
労働時間については、次の基準が定められています。
・直前の1か月間の時間外労働が100時間以上
・直前の2~6か月間の平均時間外労働が月80時間以上

まず傷病手当金を請求、労災に切り替えるという事例も

メンタル不調の労災認定には聞き取り調査などもあり、時間がかかりますが、傷病手当は、必要書類に医師の署名があれば給付されます。このため、まず傷病手当金を請求して、後日、労災が認定されれば労災に切り替えるという事例もあります。
傷病手当と労災の休業補償は併用はできないので、この場合は、傷病手当を返還して、労災の休業補償を受給することになります。

手続きは複雑になりますが、審査期間中の生活費などに使えるという利点があります。
傷病手当は非課税です。
なお、給与は0、傷病手当が給与の約2/3支給されている期間についても、社会保険料は納付が必要です。

出勤・欠勤の扱いと翌年の有給休暇

労災保険の休業補償を受けている期間は、労働者が業務中の事故や病気により仕事を休んでいる期間であり、社会保険上の保障を受けている状態を指します。この期間については、社内規定や労働協約などで、勤続年数の積算や有給休暇の付与条件として考慮される場合がほとんどです。
労働日数としては、出勤として扱って翌年の有給休暇日数が算定されるということです。

一方、傷病手当を受けている期間は、欠勤として扱われるのが一般的です。

また、傷病手当は、同一傷病で受給できるのは1年半までとされているのに対して、労災は無期限(何年でも)です。労災は、1年ほどで再審査があり、障害年金・傷病年金に移行、または遺族年金などの補償もあります。業務災害の場合は、休業中は解雇はできません。

従業員の休業期間中の手続きについて、不明なこと、お困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

特集記事

最新記事

//

Contact us

お気軽にお問合せください。